堀松印房

手書き文字をハンコに2019.07.05

 

通常、ハンコを彫るときにまずすることは、手書きでの印稿作りです。
PCのフォントをそのまま使ったりするのは、同型印を量産することにつながるので避けなければなりません。
本来はちゃんと技術をもった職人が、一つ一つ丁寧に彫ることで信頼の証となるわけです。

 

なのに実際は、技術のないハンコ屋が大部分なのが現状です。
大量生産されたハンコが流通し、その価値は下がる一方。

 

「ハンコは安くてすぐ買えるもの」

 

そんな誤解が常識になってきてしまっている。


その現実を直視せず、利益を追求し対策をとってこなかった業界にも責任はあります。


だからこそ、我々技能士は本来のハンコのあるべき姿を発信していかなくてはならない。
技術あっての印章だと、訴え続けなくてはなりません。

 

 

使用者の権利と主張を示す大切なものなのに、いくらでも偽造できる安価なもので済ませていいのでしょうか。
大事な局面で捺されたそのハンコが、一目でフォント字だとわかるような味気ないものだとしたら。
「その程度の覚悟しかない」と思われても当然だと思います。

 

最悪、機械彫りのハンコが原因で、偽造され訴訟問題にまで発展する可能性もあります。
そういった事例がないわけではないのです。

 


ハンコを捺す行為は、それ自体が捺した本人を表すもの。

 

安物を使って自分の価値を下げるなんて、もったいないと思います。

 

 


前置きが長くなりましたが、改めてそう思うきっかけが、先日のご注文にありました。


「手書きの文字でハンコを作ってほしい」


そのお客様が提示されたのは、筆で書かれた立派な字でした。
ほかの店にもあたったものの、全て断られたとか。

 


なるほど確かに、筆字をハンコで表現するとなると、文字のかすれ具合をどうするかが問題となる。
彫刻する以上、すべて完璧に再現するのは不可能ですが、まったくできないことではない。
そのラインをどこまで上げるかが、腕の見せ所となるわけです。

 

機械彫りしかできないお店では、もちろん無理です。

 

そもそも機械では、曲線が彫れません。
どうしてもギザギザになってしまい、その間に朱肉が入りこんでぼたついた印影になってしまいます。
ちゃんとした印材で、ちゃんとした朱肉で、ちゃんとした捺し方をしても、です。

 

 

そこで、手彫り職人が彫るとどうなるか。

 

 


(すべては載せられないので一文字のみ)


繰り返しますが、手彫りで完全再現は不可能です。
自分としてもまだまだ修正箇所は見受けられますが、少なくともお客様は満足していただけたようです。

 

結局は、お客様次第。

 

そのご要望にどれだけこたえられるかが、職人としての価値だと思います。

 


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