角印:北村左官商店を彫る。仕上げ2020.07.08
荒彫りが終われば、いよいよ仕上げ。
ハンコの完成度を決める大変重要な工程です。
荒彫りの時もそうですが、道具の印刀の切れ味は基本中の基本。
切れ味の落ちた刀でいくら彫っても、いいものなんてできません。
あとは、刀の形をよく理解すること。
刃をどの角度で、どんな強さでどう入れれば、どう彫れるか。
刃の形をよく理解しておかなければ、細かい作業は不可能です。
そのためにも、自分で何度も砥ぐ練習をしなければなりません。
他人が砥いだ刃物で彫るなんて、自分でも嫌です。
さて、仕上げのポイントというと。
彫り方は人それぞれだとは思いますが、基本的にはまず枠から彫ります。
まずここを押さえないと、先に進めません。
続けて、文字の一番外側から彫ります。
今回の場合、6文字全体を一つの文字に見立て、上下左右にあたる線を整えていく。
そうすれば、隣り合った字の位置がずれずに彫り進められるからです。
逆に細かい部分からやってしまうと、せっかくうまくできたのに全体からするとずれている、そんなことになりかねません。
全体の字の四辺が整ったら、次に文字ごとの四辺を整える。
そして最後に細かい部分を。
ここで大事なのは、一文字一文字を最後まで彫らないこと。
全体的に少しずつ彫り進めていくことで、文字ごとに線の太さに差が出るのを防ぐことができます。
でも手作業ですから、どうしても差は出ます。
だから時々全体を見渡して、太さがそろっているかチェックします。
今まで彫っていた部分が、ほかの文字を彫った後に見返すと違って見える。そんなことがよくあります。
なので経験上、一文字ずつ完成させていくやり方は避けた方がいいです。
あとは、仕上げによってどうしてもできる文字の土手。これをなるべく削り取ること。
これがあることで、朱肉を付けた時に文字の周りまで赤くなるし、見栄えも悪い。
その状態でながく使い続けて摩耗したら、どんどん線が太くなってしまうからです。
さらには、土手があることで仕上げがしづらい。
何十年も使い続けられるようにするためにも、なるべく土手は取り除く必要があるわけです。
鏡で何度もチェックしながら、違和感がなくなるまで彫り続けて納得したら、いざ捺印です。
実際に捺してみて修正箇所がなければ、これで完成。
今までの努力が報われる瞬間です。
しかし不思議なもので、時間が経ってから改めて見返すと、いろいろ見えてくるものがあります。
なので、彫ったらそれでおわりではなく、時間をおいてから見返すことも大事です。