堀松印房

それでも印相体を売りますか?2022.08.07

 

選挙中の銃撃事件から始まり、旧統一教会がなにかと話題に上がる昨今ですが。
そういう宗教団体の信者集めや献金の道具として、壺やハンコがよく報じられています。
またハンコが悪者扱いされているのは、腹立たしい限りです。

 

ハンコの業界誌の記事にあったのですが、そういった霊感商法に使われるハンコは、ほぼ印相体で彫られたものらしい。
パソコンと彫刻機さえあれば誰でもハンコを作れてしまうので、素人が作った駄作が市場にあふれている現代です。
それらの多くが、まさに印相体。
発注する側からすれば、それっぽいハンコを安く作ってくれる素人店は格好の相手だったのでしょう。
それらを法外な値段で信者に売りつけ、救済の名のもとにひとの人生を破滅させる。
極めて悪質です。

 

言われるまま印相体を彫り続けた彼らに、罪悪感はないのでしょうか?
彼らがどういう気持ちだったかは分かりませんが、結果として犯罪の片棒を担いだといっても過言ではない。

 


もちろん、印相体を彫ったハンコ全てが悪いわけではありません。
売った相手が善か悪かなんてわからない。
しかし、ただでさえハンコの価値が地に落ち、宗教団体の道具に使われたことで広まる悪評。
風当りは悪化の一方です。
要望があればそれに応えるのがハンコ屋ですが、このままでいいのでしょうか?
業界を挙げて、ブレーキの役目を果たす必要があるのでは?

 

怪しい団体と関わらないのは当然として、印相体のそういった情報も積極的に発信していくべきだと思います。
廃止とまでいかなくても、印相体に対する態度を改めるべき。
吉相も開運も、科学的根拠はないと。

 


じゃあほかの書体ならいいのか、と思われるかもしれません。
問題なのは、ろくに技術もない安売り店が乱立したために、安く簡単にハンコが買えると世間に認識されたことです。
その結果、技術が廃れ、ハンコの価値が下がり、業界が存亡の危機に陥った。
印相体はそれを助長する要因となってしまった。
出来はともかく、安くて誰でも作れる印相体だから、怪しい連中にも目を付けられた。
そんな罪深い書体を、お客様に勧められますか?

 


当店では今後も、印相体は取り扱いません。

 


なので自分は、手を抜かない。2022.06.06

 

仕事で使うお店の角印を彫りなおしました。
前回作ったのはもう8年前。もうそんなに……。
さすがに当時作ったものを今見ると、いろいろと気になる点も多く。
いい機会だし全部削って一から作り直しです。

 

そのおかげで、今後領収書に自信をもって捺せるようになりました。
いわばお店の顔といってもいいハンコなので、手を抜くわけにはいきません。

 


印章彫刻技能士であれば自分で彫ることができますが、一般の方はそうもいきません。
ご自分の持っているハンコ、誰の目に触れても恥ずかしくないと言い切れますか?

 


先日、ご注文をいただき彫らせていただいたお客様。
以前とあるネットショップで買ったハンコが、それはもうひどいものだったと。
完全手彫りなのに、三千円。もうその時点でハズレです。
印面が平らではないので、いくら朱肉をつけてもまともに捺せないものだったそうです。

 

典型的な、機械で彫っただけの劣悪品。
拝見したわけではないですが、おそらくフォント字を並べただけでしょう。
そうでなければその値段をつけられるわけがない。
なのに、悪びれもせず完全手彫りだという。
印章店としてのプライドがかけらもない、悪質業者だと言わざるを得ない。

 

こういうひどいお店は一刻も早く取り締まるべきです。
今回のケースはまれだとしても、安物を購入された消費者が、そのハンコの劣悪さに気づいていないケースが多い。
そういう意味でも、現状は深刻です。

 

毎年更新の免許制にして、技術を持ったハンコ屋しか販売できないようにするべき。
既製品を並べたハンコタワーを廃止するくらいしないと、ハンコの価値は地に落ちたままだと思います。


安い粗末なハンコに、自分の意思を込めるという滑稽さ。
それに気づく方が一人でも増えることを、切に願います。


なかなか見られない光景2022.04.18

早いもので、今年の1/3が終わろうとしております。
新生活が始まった方も多いかと思います。
相変わらずのコロナ禍だったり、まさか令和の時代に戦争が始まったりと暗い話ばかりですが、当店は相変わらずです。

 

全国大会にむけての作品作りを終えたと思ったら、今年も花粉症で苦しむ日々。
それもようやく落ち着いてきて、ある計画のためいろいろ準備を進めております。


その一環として、ここ6年くらいで彫ったハンコを並べてみました。

 

 

 

 

講習会で彫ったり、大会で彫ったものたちです。
すべて手書き&完全手彫り。フォントも彫刻機も使用しておりません。

 

地元近所には数件ハンコ屋がありますが、果たしてこのレベルの職人がどれほどいるのでしょうか。
少なくとも自分は存じ上げません。


情報過多と呼ばれる現代、ハンコ屋自体もそれこそ全国にたくさんあります。
その中から「本物」を求めることがどれほど難しいか。
いや、大量に流通している、機械彫りしただけの粗悪品が本物だと勘違いしている方がどれほど多いことか。


彫った作品を公開したり、動画をUPしているのは、その抵抗です。

一人でも多くの方に、本物を知ってほしい。


それができなければ、業界は終わります。

 

 


篆書・小篆+絵:一字千金2022.03.23

 

30mm(一寸角)篆書・小篆+絵:一字千金


講習会の課題で彫ったものです。


一字千金とは:

文章、詩、筆跡などが立派ですぐれていること

 


お客様から預かった大切な名前を、配字し、バランスをとり、完成度を上げていく。
機械では決してできない、気品さえ漂うほど調和のとれたハンコを手で仕上げていく。
一文字一文字に全力で挑むことは、ハンコ屋として当然の義務です。

 

しかし現状は、その最低限のプライドすらないハンコ屋だらけ。

売れればなんでもいい、消費者に良し悪しなんて分からない。

 

そんな姿勢だからこそ、逆に信頼をなくし、ハンコの価値すらなくしてしまっている。
まさに自業自得。
業界そのものが下り坂になった結果、真面目に彫っている職人も逆風にさらされている有様です。

自分も、いつまで続けられるか分かりません。

 


それでも、技術を継承したものとして。

一字千金という言葉に似合う仕事を続けていきたいと思います。

 

 

それでは動画をどうぞ。


■YouTube

 

■ニコニコ動画

https://www.nicovideo.jp/watch/sm40217038

 

 


これでひと段落2022.03.11

 

 

毎年、ハンコの彫刻技術を競う大会があるわけですが、今年の出品を終えました。

 

第24回 全国印章技術大競技会

 

数か月前から準備し、結果として4本を彫りました。

その中で一番力を入れたのが、写真の角印です。
36㎜の印材に9文字を彫るというもの。


本気で彫ったしかなり丁寧に彫ったのですが、彫りあがったものを見ると……
正直なところ、悔いの残るものでした。

 

彫っている間はいまいちでも推したらうまくいった、というパターンもないわけではないですが、
今回は明らかにうまくいかなかった。
写真に写っている部分だけでも、修正点があります。
取り返しのつかないミス。
頑張っただけにショックが大きいです……。

 

でもこれで、自分の改善点が見えました。
それが分かっただけでも成長できたということ。
彫刻機に頼ってばかりいては絶対に気づかない。

 


今後の仕事に活かされることを願うばかり。