堀松印房

値段変更のお知らせ2019.09.11

 

みなさんご存知の通り、10月から消費税が10%に上がります。

 

当店も例にもれず商品の値段を上げることになりますが、それと同時に改めて値段設定を見直すことにしました。
全商品を値上げすると同時に、サイトの陳列方法も改良しようと思います。


といいますのも、ある企業のハンコの値段設定が大変なことになっていたからです。

 

その名は、日本郵政。


郵便局でもハンコが作れるのをご存知の方は多いかと思います。
その値段がどれくらいか、ご覧になったことはありますか?

 

 

12mmの柘の銀行印、ケース付き。

11,000円。

 


はっきり言います。
柘の銀行印でここまでの値段をつけているお店はほとんどないです。
しかも機械彫りでこの値段はありえない。
(見本の印影を見れば、これが機械彫りであることは明らかです)

 

完全手彫りで、しかも高名な職人さんが手掛けていたならば、まだ納得できる値段。

 


PCでフォントを並べるだけ、せいぜい1分くらいの作業で、あとは機械任せ。
そこに技術や人の想いなんてみじんもない。

 

そんなものに1万以上も払えますか?

 


どういう意図でこの値段を設定したのか存じませんが、ろくに市場調査もされていないと思われます。

下手したら1000円以下で買えるお店が多いでしょう。

 

対する当店では、お客様との相談の上、印稿を手書きし、それを印材に転写し手で全て彫り上げる。
膨大な手間暇をかけて、6000円代です。

その差。ほぼ二倍。

 

こんなものを見せられたら、ばからしく思えてくるのも当然です。

 

本音を言えばそれ以上に値上げしたいところですが、あまりに非常識な値段なので。

常識の範囲内で、差を縮めさせていただく程度にします。

 


ただでさえ、手彫りハンコの値段は安すぎると思います。
苦労して身に着けた技術を用いた、世界でただ一つのハンコ。

 

その本当の価値を広めたい。

 

業界が生き残るためにも。

 

 

 

いろいろ書いてきましたが、お客様にさらなる負担を強いることは紛れもない事実。

頭を下げるしかございません。

どうかご理解いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

 


全ては、「本物」を求めてくださるお客様のために。

 


全国大会に向けて2019.08.31

 

 

8月9日から東京ビッグサイトで行われた、コミックマーケット。


サークル参加したり一般参加もしたりで、つかの間の休日を楽しみました。

しかしその直後からは仕事に追われ、それらがようやく終わったかと思いきや、今度は大印展に出品する作品作りに追われております。


大印展とは、日本で最も古くからあるハンコの手彫り技術を競う全国大会です。
ここ数年は毎年出品し、前回は二部門で金賞をいただきました。

もちろん今年も上位を狙ってはいますが……はてさて。


もう締め切りまで10日ぐらいしかないので、ラストスパートで追い込みます。


平気で嘘をつく素人たち2019.07.17

ふらっと立ち寄ったとあるオンラインハンコショップでは、また嘘で塗り固められていました。
プロからすれば明らかに機械彫りなのに、職人が手掛けているという。

 

ここでのポイントは、手彫り職人とは一切書いていないこと。
職人といっても、ただの機械オペレーターの可能性が高い。
そんな素人が作ったハンコに信頼性なんてあるはずがない。

 

印鑑という単語を乱用している時点で、少なくとも専門家は関わっていないでしょう。
本来は、自治体や金融機関に登録してあるものを「印鑑」と呼びます。

ハンコ屋で印鑑は売っていません。印章を売っています。


だいたい、職人の名前すら書いていない時点でまず疑わしい。

 

無知な客をまんまとだまして劣悪品を売りつける悪徳商法に他ならない。
売っている店側の人間ですら、そこに何の疑問も持っていない可能性すらありえる。

 

納期の速さと安さには、理由があること。
それに見合った危険性があるということ。
そのことを全てのハンコ屋が明記するべきなのに。

 

買った本人は、その嘘に気づいていない。
嘘だと思う余地すらないほど、それがあたりまえになってしまっている。

 

業界自ら、ハンコの地位を貶めてきた結果である。

 


需要が減るのも当然です……。

 

 

そんな怒りを抱きつつも、今日も手作業でハンコを彫ります。

 

本物を求めてくださる、お客様のために。

 

 


参考:
意外と知らない、ハンコ、印鑑、印章の違い
騙されているかも? ネットショップの嘘を見抜くポイント5つ


手書き文字をハンコに2019.07.05

 

通常、ハンコを彫るときにまずすることは、手書きでの印稿作りです。
PCのフォントをそのまま使ったりするのは、同型印を量産することにつながるので避けなければなりません。
本来はちゃんと技術をもった職人が、一つ一つ丁寧に彫ることで信頼の証となるわけです。

 

なのに実際は、技術のないハンコ屋が大部分なのが現状です。
大量生産されたハンコが流通し、その価値は下がる一方。

 

「ハンコは安くてすぐ買えるもの」

 

そんな誤解が常識になってきてしまっている。


その現実を直視せず、利益を追求し対策をとってこなかった業界にも責任はあります。


だからこそ、我々技能士は本来のハンコのあるべき姿を発信していかなくてはならない。
技術あっての印章だと、訴え続けなくてはなりません。

 

 

使用者の権利と主張を示す大切なものなのに、いくらでも偽造できる安価なもので済ませていいのでしょうか。
大事な局面で捺されたそのハンコが、一目でフォント字だとわかるような味気ないものだとしたら。
「その程度の覚悟しかない」と思われても当然だと思います。

 

最悪、機械彫りのハンコが原因で、偽造され訴訟問題にまで発展する可能性もあります。
そういった事例がないわけではないのです。

 


ハンコを捺す行為は、それ自体が捺した本人を表すもの。

 

安物を使って自分の価値を下げるなんて、もったいないと思います。

 

 


前置きが長くなりましたが、改めてそう思うきっかけが、先日のご注文にありました。


「手書きの文字でハンコを作ってほしい」


そのお客様が提示されたのは、筆で書かれた立派な字でした。
ほかの店にもあたったものの、全て断られたとか。

 


なるほど確かに、筆字をハンコで表現するとなると、文字のかすれ具合をどうするかが問題となる。
彫刻する以上、すべて完璧に再現するのは不可能ですが、まったくできないことではない。
そのラインをどこまで上げるかが、腕の見せ所となるわけです。

 

機械彫りしかできないお店では、もちろん無理です。

 

そもそも機械では、曲線が彫れません。
どうしてもギザギザになってしまい、その間に朱肉が入りこんでぼたついた印影になってしまいます。
ちゃんとした印材で、ちゃんとした朱肉で、ちゃんとした捺し方をしても、です。

 

 

そこで、手彫り職人が彫るとどうなるか。

 

 


(すべては載せられないので一文字のみ)


繰り返しますが、手彫りで完全再現は不可能です。
自分としてもまだまだ修正箇所は見受けられますが、少なくともお客様は満足していただけたようです。

 

結局は、お客様次第。

 

そのご要望にどれだけこたえられるかが、職人としての価値だと思います。

 


売る側と買う側、両方に試される覚悟2019.05.25

仲邑菫 印稿

 


練習として、仲邑菫さんの実印用印稿を勝手に作ってみました。


適当な名前でもよかったのですが、せっかくなので有名人で。


プロ入り最年少記録を樹立した棋士の彼女。

暗くなる話題が多い昨今、若い世代の活躍が報道されると少し気持ちが軽くなる気がします。

 

 

さてこの印稿。

 

これで完成ではありません。

 


下書きをしたとはいえ、筆で一回書いただけなのでかなり荒いです。
今見ても、数々の改善点が……。

それらをすべて挙げるのは大変ですし、今回の趣旨はそれにあらず。

 

 

苗字と名前で、文字数が違う人は大勢いらっしゃいます。

今回の場合、二文字の「仲邑」方を少し幅広に、一文字の「菫」をやや縮めて配置しています。
「菫」の字のほうが、やや細くなっているのがおわかりでしょうか?
こうすることで、全体として偏らない整った印稿になります。
逆にやりすぎると全体のバランスが崩れてしまうので、そのバランス感覚も必要です。

 

ほかにも、隣同士の文字の大きさにも気を配ったり、変に密度に差がある場所がないか探したり。
線一本一本にまで気を抜けません。

 


いい印稿を作るためにする作業は、最初に辞典からどの文字を拾うか考えるところから始まります。

むしろ、彫るよりも印稿を作る時間のほうが大事であり、時間が長くなったりもします。

 

いくら彫る技術があっても、一番大事な印稿がおろそかになっては、一級技能士を名乗る資格はありません。
機械のフォントをただ当てはめただけの印稿では、血の通ったものなどできません。

 


ハンコ職人は、お客様にお渡しするハンコに対してとことんこだわります。

 

それが、大事なお名前をお預かりする者の責任であり、義務です。

 

 

もしあなたがハンコを依頼するなら。


あなたのための「最良」を追求し続けるハンコ職人ですか?

 

フォント字を並べることしかできない彫刻機オペレーターですか?

 

 

その覚悟に、こちらは全力でお応えいたします。