堀松印房

篆書・小篆:心無累2020.09.27

 


24mm角(八分角)篆書・小篆:心無累


講習会で彫ったものです。


心無累とは、心に煩わしいことがないこと。


このように三文字を角印に配字する場合、二文字の方を幅広に、一文字をやや狭くします。
どちらに偏っても全体のバランスが崩れてしまうので、ちょうどいい位置をとるのが難しいです。

さらに左右対称、しかも田が多い文字ともなると、曲がらずに彫り上げることはかなりの技量を必要とします。
そういう意味でも、なかなかいやらしい課題でした。

 


小篆にしてはやや線質が硬いのと、心の字がやや太くなってしまった。
それ以外はよくできたと、先生に褒めていただきました。


今後も頑張ります。

 


カーボン製の印材を手彫りする2020.09.24

 


生まれて初めて、カーボン製の印材に手彫り彫刻してみました。
下請け仕事で。

 

本来なら手で彫ることのできない、機械彫り用の印材なのですが……。
フルカーボンではなくソフトなので、手でも彫れると言われ。

これも経験だと挑戦してみました。

 

 

まず結果から言いますと、かなり硬い。
カーボンなので当然ですが、これは手で彫るものではない。

 

極小の砂をガチガチに固めたような感じで、かなり力を入れないと彫れない。
印刀をがっちり固定し、ミスしないよう普段より力んで彫ることになる。

荒彫りの半分もいかないくらいで、両腕が悲鳴を上げました。
とても彫り続けられませんでした。

 

数日かけてなんとか彫り上げることができたものの、腕のダメージは大きかったです。
無茶な彫り方をしたせいで、思い通りに彫れないし、不満の残る出来となりました……。

一本彫っただけで、印刀まで削れてまともに使えなくなりました。

 

 

表面に特殊なコーティングがされているせいか、印面の円の外側付近に変な線が入っている。
いくら削っても取れません。
削りカスも極小なので、ずっと吸っていたら体にも悪そう。

 

見た目はオシャレだし、硬いので人気の印材ですが。
手彫りに向いていないと判明したので、自分の店に加えることは無いと思います。

 


およそひと月かけて…2020.09.20

 

毎年出品している大印展が今年は中止になり。
発表の場をなくしてはならないと代わりに開催されることになった、令和印章修練会

 

その作品作りがようやく終わりました。
あとは印影を台紙に貼って発送するのみです。

 


その出品作品のひとつ、角印。

仕上げ前と仕上げ後の写真を並べてみます。

 

  

 

仕上げをする前と後で、これだけ変わります。

線質が洗練されているのが分かりますでしょうか?

 


この仕上げをしないまま、大量の安価なハンコが流通しているのが現実です。

 

理由は簡単。

 

できる人が少ないからです。

 


ハンコ屋の看板を掲げておきながら、手でハンコを彫れる人間がいないケースがほとんど。
外注という形で、職人に彫ってもらう場合もありますが、それはまだマシなほう。

 

PCフォントを並べ、機械で彫っただけの粗悪品をさも当たり前のようにお客様に提供する。
そんなお店をハンコ屋と言っていいのでしょうか?

 


安いハンコには、理由がある。
いくらでも偽造ができる大量生産品。
そんなハンコに、あなたの大事な財産、権利を預けられますか?

 


超希少象牙2020.08.13

 

この一ヶ月は、珍しく次から次へと注文が入り、毎日忙しくしておりました。
ここまで続けて象牙を彫ったのは初めてです。

 


ご存知の方も多いと思いますが、象牙は印材の最高級品。
最も印材に適した材料として、昔から重宝されているものです。

 

牙の中心部分からわずかにしか取れない上質な象牙は、目が詰まっていて商品として大変すぐれているだけでなく、
彫る側からしても、並の象牙よりも彫りやすいです。

 

 

さて、最高級の象牙の中でも、さらに希少な象牙があるのをご存知でしょうか?

 

横目(または日輪)です。

 

 


こちらは4本とも象牙ですが、右端の一本だけは横目です。

 

芯に対し縦に切り出したものを印材とするのが普通ですが、横目はその名の通り、印材の側面を、芯が貫いている形です。

大変珍しいのでめったにお目にかかれない高額な印材なのですが、問題は層の向き。

彫る側からしたら、横に走る層を精密に彫らなければならないわけです。

 


結果から言いますと、ものすごく彫りづらかったです。

 

なにしろ、普段の彫り方が通用しない。
同じように彫っていたら、ボロボロと欠けてしまい、とても細かい彫刻などできない状態でした。

 

でもそこはプロですから、彫り方に少し工夫をしてなんとか彫り上げることができました。
いつもより時間はかかりましたが。

 

 

ただの希少価値というだけでなく、単に彫れる人が少ない、職人に嫌われる。
なかなか見ない印材という理由は、いろいろありそうです。

 


角印:北村左官商店を彫る。仕上げ2020.07.08

 

 仕上げ前

 仕上げ後

 

 


荒彫りが終われば、いよいよ仕上げ。
ハンコの完成度を決める大変重要な工程です。


荒彫りの時もそうですが、道具の印刀の切れ味は基本中の基本。
切れ味の落ちた刀でいくら彫っても、いいものなんてできません。

 

あとは、刀の形をよく理解すること。

刃をどの角度で、どんな強さでどう入れれば、どう彫れるか。
刃の形をよく理解しておかなければ、細かい作業は不可能です。

そのためにも、自分で何度も砥ぐ練習をしなければなりません。
他人が砥いだ刃物で彫るなんて、自分でも嫌です。

 

 

さて、仕上げのポイントというと。

 

彫り方は人それぞれだとは思いますが、基本的にはまず枠から彫ります。
まずここを押さえないと、先に進めません。

 

続けて、文字の一番外側から彫ります。
今回の場合、6文字全体を一つの文字に見立て、上下左右にあたる線を整えていく。
そうすれば、隣り合った字の位置がずれずに彫り進められるからです。
逆に細かい部分からやってしまうと、せっかくうまくできたのに全体からするとずれている、そんなことになりかねません。

 

全体の字の四辺が整ったら、次に文字ごとの四辺を整える。
そして最後に細かい部分を。

 


ここで大事なのは、一文字一文字を最後まで彫らないこと。

全体的に少しずつ彫り進めていくことで、文字ごとに線の太さに差が出るのを防ぐことができます。

 

でも手作業ですから、どうしても差は出ます。
だから時々全体を見渡して、太さがそろっているかチェックします。

今まで彫っていた部分が、ほかの文字を彫った後に見返すと違って見える。そんなことがよくあります。
なので経験上、一文字ずつ完成させていくやり方は避けた方がいいです。

 


あとは、仕上げによってどうしてもできる文字の土手。これをなるべく削り取ること。

これがあることで、朱肉を付けた時に文字の周りまで赤くなるし、見栄えも悪い。
その状態でながく使い続けて摩耗したら、どんどん線が太くなってしまうからです。

 

さらには、土手があることで仕上げがしづらい。

何十年も使い続けられるようにするためにも、なるべく土手は取り除く必要があるわけです。

 

 

鏡で何度もチェックしながら、違和感がなくなるまで彫り続けて納得したら、いざ捺印です。

実際に捺してみて修正箇所がなければ、これで完成。

今までの努力が報われる瞬間です。


しかし不思議なもので、時間が経ってから改めて見返すと、いろいろ見えてくるものがあります。

なので、彫ったらそれでおわりではなく、時間をおいてから見返すことも大事です。